京都市鹿ヶ谷にある青銅器専門の美術館、泉屋博古館に行ってきました。
目的は現在開催されている企画展、【泉屋ビエンナーレ2023 Re-sonation ひびきあう聲】の鑑賞と、この企画展にご出展なさっている鋳金作家の杉原木三さんにお会いすることです。
杉原さんは私と同郷の宮崎県のご出身で、東京藝術大学で鋳金を学ばれた後、宮崎県の綾町でパートナーの三上想さんと三三鋳金工房を営んでおります。
実は昨年の9月に工房見学をさせていただく予定でいたのですが、台風の影響による飛行機の欠航で諦めざるをえなくなり、お会いできずにいました。
そんな中、杉原さんから泉屋ビエンナーレにご出展される旨のお知らせと招待券をいただいたので、杉原さんと作品にぜひお会いしたいと思い足を運びました。
アーティストトークの面白さ
泉屋ビエンナーレは「新進気鋭の鋳金作家が約3000年前の中国古代青銅器からインスピレーションを受けた新作を制作し、同じ空間に展示することで時空を超えた対話を観る人に体験していただく」という趣旨のようです。
今回杉原さんを始め鋳金作家の方々のアーティストトークがあるとのことで、この日に合わせて訪れました。
アーティストトークの中で、杉原さんが語られていた「私の家の周りは緑がいっぱいで、その緑の綺麗さを表現したいと思った」というお話や、山本学芸員の「古代の青銅器は仕上げに動物(主に鳥)の血を塗っていた」「青銅器の凹面に漆が残っていたものがあるので漆も表面処理に使われていた」というお話も興味深かったです。
「青銅器」と聞いたら、現代では緑色のブロンズの作品が思い浮かぶ人が多いかと思います。
その美しい色は長い間の経年変化を経て出現してきた緑青(ろくしょう)という錆の色です。
ただ古代は錆を愛でる文化はなかっただろうと山本学芸員。
緑青の美しい緑色に悠久の時の流れを感じ意匠として表現する現代と、古代の美意識が異なるような気がして面白かったです。
アーティストの方々のお話や、制作に対する意識、学芸員の方の深い知識からの考察が聴けたのはとても有意義な時間で、次からはできる限りアーティストや学芸員の方の作品のご説明がある時に美術館へ行こう、と思いました。
写真は杉原木三さんの作品【猫鎛(びょうはく)】
愛猫であり工房長のにゃんまる君をモチーフに、鳥や、ユニコーンと人魚の間の子のような不思議な動物も生息しています。鐘は実際に鳴らすことができ、とても良い音色でした。
こちらは久野彩子さんの作品で【time capsule】
とても緻密な作りに驚きました。イメージ元の円渦文敦(えんかもんたい)が過去のタイムカプセルとすれば、こちらは未来へのタイムカプセルみたいだな、という印象を受けました。
時の流れを感じる素敵な作品です。
泉屋ビエンナーレ2023は 10月15日(日)まで。
9月23日(土)と10月7日(土)作家の方々を講師に迎え、鋳物体験ワークショップ(要予約)もあるようなので、ご興味のある方はぜひ泉屋博古館へ足をお運びください。
SALUK店主 甲斐可奈子