オーダーメイドの家づくりに合わせた表札づくり
遡ること昨年の秋、友人からの久しぶりの連絡。
「今度住まいを新築するから、シュッとした表札を作りたい」との相談がありました。
一般的によく言われる『家は一生に一度のお買い物』という特別な機会に、私のことを思い出してくれて嬉しかったです。
ぜひやらせていただきたい旨をお伝えし、打ち合わせをすることに。
しばらくして家族4人でSALUKを訪ねてきてくれました。
コロナ禍もあってか随分と久しぶりだったので子供たちの成長に驚いたり、近況を報告し合って話に花が咲きました。
この時まで私は知らなかったのですが、今は自分で間取り図を作れるアプリがあるのですね。壁の色を決めたり家具なども配置できるみたいです。
友人が制作したイメージを見せてもらうと、ブルックリンスタイルのかっこいいものが出来上がっていて、話を聞いていると私が住むわけではないのにワクワクしてきました。
何回かフォント等のやり取りをした後、制作に取り掛かりました。
今回はブルックリンスタイルというお家のイメージに合わせ真鍮のヘアライン仕上げで制作しました。
作るのに夢中で制作過程の写真を撮りそびれました…
厚さ3mmの真鍮板の切り出しから始まり、すべて手作業で行いました。
糸鋸の刃は学生の時からヘラクレスを使っていたのですが、今回何の気なしに買ったスイス製のPIKEという糸鋸がとても切れ味が良かったのは嬉しい発見でした。
ヤスリをかけ形が決まったら、滑らかな曲線になるように角を面取りしていきました。
ヤスリ目を精密ヤスリで細かくした後、サンドペーパーの粗いものから細かいものに3段階程かけていきます。この段階で研磨スポンジでヘアラインをつけます。
裏は長さ50mmの真鍮棒をはんだ付けし、壁から浮かせて設置する仕様になっています。
真鍮棒が付いたら再度ヘアラインを綺麗に整えて、今回は経年変化を緩やかにしたかったので箔を保護するスプレーでコーティングしました。
番地も作りました。いい雰囲気に仕上がったと思います。
この夏、友人のお家も完成し、表札も無事に納めることができました。
とても気に入ってくれたみたいで嬉しかったです。
その家のシンボル的な存在である表札。
友人の人生の節目である滅多にない機会に、自分の今まで培った技術で応えることができたのは、今まで金属工芸を続けてきて良かったと思えるような、とても価値のあることでした。
共通の友人と一緒に遊びに来て、と言ってくれているのでお宅訪問が待ち遠しいです。
Inubuse様、どうもありがとうございました。
SALUK / 綾 METALWARE 甲斐可奈子