Prototype2の制作
昨年の初秋、旅するハーレーライダーI氏の為にノートパソコンをSissy barに取り付けるためのケースを制作しました(Prototype1 制作の様子はこちら→新しい挑戦ー旅するハーレーライダーのために)。
前回真鍮で作ったPrototype1をより頑丈にするために今回は鉄で制作することにしました。
私は今まで錫をメインに扱っておりましたので、鉄の溶接はしたことがありませんでした。
若干の不安はありましたが、興味はあったのでやってみることにしました。
YouTubeで調べて家庭用の電源でも使える溶接機を購入しました。
YOTUKAの100V半自動溶接機を購入。他を色々試したわけではないですが、軽くてコンパクトなので結構使いやすいと思います!
溶接の師匠降臨
動画を見て、自己流に練習しておりましたが、やはりきちんとしたものを作りたいので元鉄工所に勤務していた友人に相談すると、うちの工房までレクチャーに来てくれました。
これはその時の動画です。
【動画の中で強い光を放つ場面があるのでご注意ください。】
その後親切にかわいいイラストでコツをまとめた資料(虎の巻)まで送ってくれました。
持つべきものは友達ですね!
いざ制作へ
やれる準備はやった、ということで制作に取り掛かりました。
しかし材料の鉄のL字アングルは規定のサイズしかなく、まずはL字アングルを欲しいサイズにするところから始めました。このL字アングルの切断作業は優秀な助手である夫が手伝ってくれました。
今回かなりお世話になったマグホールド。磁力で直角などを固定してくれて、とても便利でした。
今までこんな便利なものがあるとは知らなかったのですが、金属工芸の専門学校時代の先生が教えてくれました。
できるだけミニマルなデザインにするために溶接部分を切開して表面がフラットになるようにしました。
溶接した時の様子。必要に応じてビードを削っていきます。
写真を撮るのを忘れていましたが、この後は鉄の蝶番をつけて開閉できるようにし、マットブラックの錆止めスプレーで塗装しました。
ついに完成
側面にはオーダーをしていただいた方のアイデアで、ネットを通すための穴を開けました。
内側に振動防止とケース保護のクッションを貼っています。
ようやくここまで辿り着きました。
後はうまくSissy barに取り付けられるかどうかです。
実際にHarleyを乗ってきてもらって最終調整をしている時の様子。
常にHarleyを預かれるわけではないので、Sissy barにケースに取り付けて、開けた際にリアフェンダーにあたらないかなど最後まで気が抜けませんでした。
さあ取り付けようと思ったら、底面に貼るクッションを忘れていたので、後日に持ち越しました。
そして…
鞍馬の雍州路(ようしゅうじ)さんまでテストドライブ。特に問題はなさそう…ということで無事に完成しました!
正直、完成に至るまで長い道のりでしたが、私自身も今までできないと思っていたことができるようになり、仕事の幅が広がって良い経験でした。
また溶接をレクチャーしてくれた友人、L字アングルの切断を手伝ってくれた夫、お役立ち情報を教えてくれる先生などのご協力もあったからこそ無事作り上げることができたと思います。どうもありがとうございます!
去り際にI氏に「私の夢が叶いました、あなたは一番の職人です、ありがとうございます」とおっしゃっていただきました。
一番の職人ではないと思っていますが、そこまで誰かに喜んでいただける仕事ができたことに私自身も喜びを感じ、これまでやってきたことが報われたような気がして感動しました。
そしてとにかく今はI氏が旅を楽しんで無事に帰ってきてくれることを願うばかりです!
最後までお読みいただきありがとうございました!
SALUK店主/綾 METALWARE 甲斐可奈子