信州をめぐる旅#04 2022年完結−奥深き蕎麦の世界と山深き戸隠神社

お蕎麦1日3軒は食べくらべるべし

「お蕎麦1日3軒は食べくらべるべし。」
かの有名なSIDE CARのマスターの言葉です。

お蕎麦を1日3軒最低3枚食べくらべると、ここのおつゆは自分にとってあまいだとかからいだとか、蕎麦の香りがどうだとか、自分の好みがわかる、ということだそうです。

さすがに1日3軒3枚の蕎麦は食べれるかな…?と思いましたが、そこは私たちが愛するBARのマスターの格言。蕎麦修験道チャレンジということで戸隠方面まで車を走らせました。

走り始めてから調べてわかったことなのですが、この地方のお蕎麦やさんはだいたい16時閉店のラストオーダー15時というところが多いようでした。滞在していた軽井沢から戸隠まではナビで2時間、到着予定時刻は14時20分。

これは蕎麦修験道チャレンジどころか戸隠まで行ったのに売り切れ次第閉店の憂き目にあったらどうしようと不安で一杯でしたが、運転してくれている夫の手前、そんな気持ちはおくびにも出さず平静を装いました。
後で聞いたところによると、その時夫も同じ気持ちだったようです。

マスターから教えていただいたおすすめのお蕎麦やさんはそばの実さんとうずら屋さん。
時間も時間だし、どちらか一方食べられればラッキーかなという私に、食べくらべ好きの夫はせっかく戸隠まで来たのだしどうしても2軒は食べくらべたい、とのこと。
夫の願いを叶えてあげたいとは思いながらも、私には祈ることしかできず、新緑がきれいだね、なんて言いながらはやる気持ちを抑えました。

はじめに中社のうずら屋さんを目指していきました。到着すると、結構な人が並んでいました。駐車場が少し離れたところにあったので、私が先に降りて案内をされていたお兄さん(大将の息子さんかな?)に聞くと40分程の待ち時間。

順番待ちの紙に名前を書いて「この場を離れて戻ってきてもいいですか。」と訪ねると「大丈夫です、15時くらいまでには戻ってきてくださいね。」とのこと。

その旨を夫に伝えると、この間に夫は奥社のそばの実さんに連絡をしていて、少し待てば入れそうな様子とのこと。うずら屋さんの待ち時間の間にそばの実さんに行こうということでお店へ向かいました。

そばの実

うずら屋さん〜そばの実さん間は車で5分程。すこし待ちましたが14時35分くらいには入店できました。

入店前はそばをかるく一枚だけ食べてうずら屋さんでゆっくり天ざるを食べようと話していましたが、天ぷらが気になって二人ともざるそばと天ぷら3種盛を注文しました。
あれだけかるく食べようとゆっていたのに夫はまさかの大盛を注文し、私は戸隠神社境内の雪室で冬の間寝かしておいたという雪中酒を注文しました。

そばの実

はじめにざるそばがきて、程なくして天ぷらが到着する寸前で、店員さんがテーブル脇の畳の上に山菜の天ぷらを落としてしまうというハプニングが…
「取り替えてきます」という店員さんに、急いでいる私たちは「大丈夫です、それでいいです、はしごするつもりで時間がなくて、それがいいんです、お願いします!」と懇願しましたが、さすがにお店的にNGとのことで両者一歩も引かず、結局は「では落ちたのだけ取り替えてきます」と落ちた天ぷらを下げていかれましたが、思いのほか替えの天ぷらがすぐ来てくれて安堵しました。

あまりにもせわしないのでもうここでゆっくりしようと言いましたが、夫はどうしても食べくらべが諦めきれない様子。私も腹をくくって雪中酒をくいっと飲み干しました。

5分程度で食べ終わり、会計に向かうと、レジ脇のお土産が置いてあるところが数人のマダム達で溢れかえっておりました。
まだマダム達がお土産を選んでいたので、その時会計している人の次に並んでいると、マダムの一人に「あら、並んでいるの?」と言われました。
普段なら「あ、どうぞ」と譲る私たちですが、この時ばかりは緊迫した状況ですので「あ、はい」とそのままお会計をしてダッシュで車に飛び乗り、うずら屋さんに戻ってきたのが15時01分でした。

うずら屋

分刻みのスケジュールをこなし、ぎりぎりうずら屋さんにも入店することができました。夫はざるそば大盛ときのこの天ぷら、私は天ざると信濃錦を注文しました。ここにきてようやく気持ちを落ち着けて食事をすることができました。

うずら屋
信濃錦

16時も近くなると、「みなさんおつかれさまでした〜」「あ〜やっと終わったね〜」との声が店内に響き渡り(めちゃくちゃ忙しくて大変そうでしたがみなさん感じが良かったです)、店員さんたちがまかない?のお蕎麦を食べ始めました。
みなさんお蕎麦好きなんだね〜と思っていると大将らしき人に「さわがしくてすみません」といわれたので「いえいえ、アットホームでいいですねぇ」と返すと「お客さんご夫婦? お商売してるでしょ?」と謎の推理。見透かされております。

大将の息子さんらしき方が店先までお見送りしてくれて、SIDE CARのマスターにうずら屋さんとそばの実さんがおいしいと教えてもらってきたことを伝えると、その方もお酒が好きなようでにわかに話が盛り上がりました。
車にのってお店の前を通り過ぎようとすると、先ほどのお兄さんに呼び止められてました。
忘れ物でもしたかな?と思っていると、「ウォッカマティーニって飲んだことありますか? なければぜひ飲んでみてください。そのバーの方に言えばつくってもらえると思います!」と推しのカクテルを教えていただきました。
どうしても伝えたかった気持ちが伝わってきて必ず飲もうと心に誓いました。

どちらのお蕎麦もとてもおいしかったのでどちらもおすすめですが、雰囲気でいうならばそばの実さんはゆったり落ち着いて食事ができて(私たちはせわしなかったけど)、うずら屋さんはアットホームな雰囲気の中で食事ができるといった感じでした。
お時間がある方はまずどちらかで召し上がってお参りしたり、周辺を散策してから腹ごなしをして、もう一方のお蕎麦やさんへ向かうとよいかもしれません。
ちなみに14時過ぎでそばの実さんの十割蕎麦は売り切れていたので(生蕎麦はありました)、午前中に行くのがおすすめです。

いざ戸隠神社奥社へ

お蕎麦はしごという目的を果たし、さあ帰ろうかといったような雰囲気が流れていたように感じましたが、せっかくここまで来たのだからせめて奥社だけでも行ってみようよ、ということであの杉並み木を求めて歩くことにしました。
以前SALUKに長野の方がいらして、おすすめスポットとして戸隠神社が良いよと伺っていました。興味はあったのですが、遠いので今回の旅では行くのは難しいかなと思っていました。
ですがラッキーなことにお蕎麦の繋ぐご縁で参拝することができました。

実は私が戸隠神社に興味を持ったのは、長野の方からおすすめスポットと伺ってから調べてみると
私の故郷の宮崎県の高千穂に伝わる天岩戸伝説と関連していたからです。

天岩戸伝説をざっくり説明しますね。
『天照大御神が弟スサノオの乱暴な振る舞いに心を痛め天の岩戸に引きこもってしまいました。
太陽神である天照大御神が隠れることによって世界は真っ暗になってしまい、災いに満たされてしまいました。
なんとか天照大御神に出てきてもらおうと、八百万の神々が集まり策をこうじ、岩戸の前で芸能の女神である天宇受賣命(あまのうずめのみこと)に踊り狂わせました。
楽しそうな様子に何事かと天照大御神が戸を少し開いた隙に、天手力雄命(てじからおのかみ)が戸を開き天照大御神の外にお出しして世界は再び明るくなったということです。
そして二度と天照大御神が御隠れにならないように岩戸を放り投げたのが戸隠に落ちて戸隠山になった』
とのことです。

姉妹神社だな〜と勝手に親しみが湧き、母と叔母といとこの御守りを購入しました。主なご利益としては開運、心願成就、五穀豊穣、スポーツ必勝などだそうです。
樹齢400年の杉林の中にしめ縄で飾られた洞のある杉があるのですが、女優の吉永小百合さんがCM撮影で入ったことで有名な杉で吉永小百合杉というそうです。今は洞には入れませんがサユリストは一見の価値があるかと思います。

奥社だけで往復1時間30分程の道のりでしたがお酒が入った体で(入ってなくても)息があがりながらもお参りすることができました。
こういったお参りをするのも体力を測るバロメーターになりますね。なまった体を思い知りました。

旅を振り返って

本当に盛りだくさんの2泊3日の旅でした。クラフトフェアと松本で夜行くお店、万平ホテルでアップルパイとロイヤルミルクティーを食べること以外は何も決めていませんでしたが、実際にお会いした方々の情報や気の向くままに動いて充実した時間でした。

クラフトフェアでは作家さん達のクラフトマンシップを感じ、万平ホテルで上質なサービスを受けるとSALUKでも来ていただいた方に気持ち良く過ごしていただきたいなと勉強になったり、優しい人たちとの出会いや、そばの奥深さ、神話の面白さに触れたくさんの経験をすることができました。
コロナ禍で自制することが多いなか、久々の外出で、私たちには必要なことでした。
この旅で得た経験を自身の作品作りやお店作りに活かしていけたらと思います。

長々とした旅行記を最後までご覧くださりどうもありがとうございました!

SALUK 店主 甲斐


信州をめぐる旅#01−クラフトフェアまつもと2022
信州をめぐる旅#02−軽井沢・万平ホテル
信州をめぐる旅#03−旧軽井沢朝散歩 と Kalko craft + art さん

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